船長は、船の大小、乗組員の多少にかかわらず船の最高責任者です。キャプテンまたはマスターと呼ばれることもあります。
積荷や乗客を安全に目的地まで運ぶ責任があります。
また、乗組員を管理・監督する任務を負っており、船の安全を守る必要がある場合には、乗組員や時には、乗客に対しても命令をすることができるなど、法律によって強い権限が与えられています。
主な仕事は、季節ごとの気象や海の状況を考慮して船の針路を定めます。また港に出入りするときや、狭い海峡や水道を通過する時には自ら操船の指揮をとります。
肩章(けんしょう)〜船の世界は階級社会〜
船の世界は、階級社会です。上位下達(じょういげたつ)で指示・命令が確実に実行されることで安全が確保されるからです。船の乗組員の階級や職務はその制服の肩章(夏服)や袖章(そでしょう)(冬服)の金筋の数とその間の色で分かります。
金筋4本は船長と機関長です。3本が、1等航海士や1等機関士です。2本が、2等航海士や2等機関士、1本は3等航海士、3等機関士を表します。
金筋の間の色が「黒」は船長や航海士です。「紫」は機関長や機関士、「緑」は通信長や通信士、「白」はパーサーや事務部職員、「赤」は医者(船医)です。黒は海を表し、機関士の紫は油の色の象徴だといわれています。通信士の緑は陸の色、パーサーや事務部職員の白は紙の色を、医者の赤は血の色を表しています。例えば、金筋4本でその間が黒であれば船長、金筋2本でその間が紫であれば2等機関士です。(出典:「まるごと!船と港」森隆行著/同文舘出版)
商船には通常、1等航海士(チーフオフィサー)、2等航海士(セカンドオフィサー)及び3等航海士(サードオフィサー)の3名の航海士が乗船しています。
航海士は、航海中、交代で24時間各々が決められた時間に甲板部員と一緒に航海当直(見張りや操船など)の業務を行います。
そのほかに、1等航海士は、港での荷物の積みおろしの監督、航海中の積荷の管理、また、出入港のときには船首で船を岸壁に着けたり離したりする作業の指揮監督などを行います。
2等航海士は、レーダーやGPS(自分の船の位置を確認する計器)などの航海計器や海図の管理と整備を担当し、また出入港のときは船尾で船を岸壁に着けたり離したりする作業の指揮監督を行います。
3等航海士は、救命設備(救命用ボートまたは救命用いかだ及び信号器類)や甲板機器の整備と航海日誌をはじめ、さまざまな書類の記録や管理を担当します。出入港のときには水先人(混みいった港内などを安全に航海するために船長を補佐して案内する人)を船内に迎え入れる業務などがあります。
小型の内航船などでは、少ない人数の航海士がこうした業務をまとめて行っています。
時間 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
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スケジュール | 就寝 | 朝食 | 当直 | 昼食 | 休息 | 夕食 | 休息 | 当直 | 就寝 |
※1日の労働時間は、原則として8時間です。
月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | ||||||||||||
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スケジュール | 乗船 | 休暇 | 乗船 | 休暇 |
※原則として、4ヵ月程度の休暇があります。
※休暇は、乗船期間(月数)に応じて異なります。
機関長は、船を動かすエンジンをはじめ、さまざまな機械、装置の運転管理などを行う「機関部」の責任者です。船を動かすには、水面下に隠れたプロペラを回さなければなりません。このプロペラを回す機械を主機関(メインエンジン)といいます。また、陸から電線で電気をもらうわけにはいかないので、電気をつくる発電機、蒸気を発生させるボイラー、食糧を貯蔵しておく大きな冷蔵庫など、機関部はさまざまな機械を担当しています。
商船には通常、1等機関士(ファーストエンジニア)、2等機関士(セカンドエンジニア)及び3等機関士(サードエンジニア)の3名の機関士が乗船しています。
航海中・停泊中の区別なく、交代で24時間機関室(エンジンルーム)の機械の運転を監視する船もありますが、現代の大型の船では、夜間に機関室で監視をしない体制にする船が大半を占めるようになりました。
そのほか、1等機関士は、主機関、プロペラなど船を動かす機械を担当し、常に良好な運転を維持できるようにしています。
また、2等機関士は、発電機や舵を取る機械、3等機関士はボイラーや冷蔵庫を冷やす冷凍機などを担当しています。
通信士は、海技士(通信)の資格を持つ職員です。
無線電話などの通信機器により陸上との連絡を取り合うほか、機器の整備も担当しています。
通信関係の責任者は「通信長」と呼ばれています。ただし、現在では、専任の通信長や通信士が乗り組む船は少なくなりました。これは海事衛星通信(インマルサット)が導入されるなど、船の通信設備が進歩し、船長・航海士などが資格を取って通信長の仕事もできるようになったからです。
航海士の指揮のもとに、見張りや舵とり、荷物の積みおろし、停泊中の見張り、船体や甲板機器の保守整備などの仕事を行います。
甲板長(ボースン)をリーダーに、甲板手(ストアキーパー・クォーターマスター)、甲板員(セーラー)がいます。
甲板長は甲板部員全体の指揮・管理を行ないます。
甲板手には二つの職種があり、航海士が行う見張りや操船を手伝ったり、停泊中に船の出入り口を見張るクォーターマスターと、甲板長の補佐役をするストアキーパーが乗っている船もあります。
機関士の指揮のもとに、機関の運転、点検・整備、修理などの仕事を行います。
操機長(ナンバン)が機関部員全体の指揮・監督を行い、操機手(オイラー)、操機員(ファイヤーマン)がいます。
現在、船に乗り組む事務部員といえば、乗組員の食事を作る調理員(コック)を指します。そのほかの職種では、客船や大型カーフェリーに乗船し乗客のサービスにあたる事務長・事務員やマリンアテンダントと呼ばれることもある船員が活躍しています。
昔の大型商船には事務長という職種がありましたが、今日では客船や大型カーフェリーなどの乗客が乗る船に限られます。
より詳細な情報は、以下をご参照ください。