造船業とは 詳細

工業の歴史は造船業にあり

日本に近代的な造船所がつくられたのは、江戸時代の末(黒船で有名なペリー来航の時期)のことです。やがて時代は明治へと移り、当時世界一の造船国であったイギリスから技術を学び、本格的な造船業がスタートしました。日本が急速に近代化してゆくなか、造船業の果たした役割は大変重要でした。それは、船をつくるための各種の部品製造が、機械工業などその他の重工業の発展を促したからです。現在のさまざまな工業のルーツは、造船にあるのです。

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世界の造船業をリードする日本造船業

明治、大正、そして昭和と造船の技術を磨き、着実に発展をとげてきた日本の造船業でしたが、第二次世界大戦により壊滅的な打撃を受けました。戦後の混乱を経て、廃墟の中から立ち直った造船業は、これまで培ってきた技術と豊富で優秀な労働力に支えられ、海運業とともに日本の経済的復興を支えました。昭和31年(1956年)には進水量において英国を抜いて世界一の造船国となりました。その後、二度にわたるオイルショックによって深刻な不況を経験しましたが、それでも日本の造船業は、世界一を守り続けてきました。高い技術力を持つ日本の造船業は、現在も世界シェアの35%を誇り、韓国とともに世界で一位、二位を争う造船国として、世界の造船業をリードしつづけています。

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造船所とは、こんなところ

造船所とは、船をつくる工場です。普通の工場と違うところは、船というケタ違いに巨大なものをつくるため、広大な敷地をもっているというところです。日本最大級の造船所を例にあげると、敷地面積は約162万平方メートルで、東京ドームの35個分に相当します。建物の面積は約42万平方メートルあり、この広大な敷地のなかに、船の建造に必要な設備が配置されています。

造船所とは、こんなところ イメージ1船台での進水式の様子

造船所で建造した船は、海に浮かべなければなりません。この船を海に浮かべる作業のことを「進水」と言います。造船所には、船を建造し、進水させるための巨大な設備である「ドック」、もしくは「船台」というものがあります。

ドックというのは、造船所内に掘ってつくられた巨大なスイミングプールのようなものです。ドックは海につながっていて、船を建造する時には、仕切り(ドックゲートと言います)を閉め、水を抜いてから作業を行います。この中で船を建造した後、今度は水を注ぎ込んで船を浮かせ、仕切りを開けて、船を海に引き出すのです。先ほどの日本最大級のドックを例にあげると、船を建造するためのドックは、長さ990メートル、幅100メートルもあります。これは、東京タワー(333メートル)と同じくらいの長さの超大型タンカーが縦に3つ入るぐらいの大きさです。

造船所とは、こんなところ イメージ3船台

一方、船台というのは、傾斜のついた巨大な台のことで、この上で船を建造します。できあがった船は、海へ向かって傾斜した台の上を滑らせることで、海に浮かべます。ただし、船台を滑らせての進水作業は重量に限度があるため、大型の船はドックで建造されています。

造船所とは、こんなところ イメージ2ゴライアスクレーン
(左右に設置されたレール上を移動)

造船所の設備のなかで、高くそびえ立ち、きわだって目立つクレーンは造船所の象徴と言えます。ゴライアスクレーンと呼ばれる門のような形をした巨大なクレーンは、1,000トンまで重量を吊り上げる能力を持っているものもあります。1,000トンということは、一般的な乗用車(1トン)を一度に1,000台吊り上げることができるのです。

造船所でつくられる巨大な船のなかには、精密機械を始めさまざまな装置が配備されています。船を進めるためのエンジン、操縦に必要な機器、荷物の積みおろしに必要な装置から、航海中の乗組員が快適な生活を送るのに必要な設備まで全てがそろったものが船なのです。だからこそ船は、陸を離れ、世界の海を自由に航行できるのです。動力装置、航海装置、荷役装置、居住・生活装置など50万点にのぼる部品の集合体、それが船です。この集合体をつくるのが造船という産業であり、造船業は総合組立産業と呼ばれています。

造船所とは、こんなところ イメージ4船体の一部(ブロック)を運ぶ様子

船を一隻つくるというのは、巨大なプロジェクトです。造船所では、船の建造に直接関わる人の他にも、設計、営業、事務など船の建造を支えるために働いている人たちが数多くいます。契約を結んでから船の完成まで、多くの人がこのプロジェクトに携わり、多くの人の手によって船はつくられてゆくのです。こうして無事完成した巨大な船の堂々たる姿は、造船所内で働く全ての人に大いなる充実感と、この上ない達成感を与えてくれます。